
■国家公務員のSEからスタート
李さんは1970年生まれ、当年とって33歳です。ハルピンに程近い黒竜江省牡丹江市に生まれました。名前の奎はクイと読み、星の名前なのだそうです。ロマンティックですよね。
李さんも数学や物理という学科が好きで、高校生の頃からコンピュータの分野に進みたいと考えるようになりました。でも、このときはまだパソコンに触れることはなかったようです。そして、志望どおりコンピュータ・サイエンスを学べる大学へ。ここでは電子回路の設計などのハードウェアまわりの研究やプログラミングなど、コンピュータに関する要素技術を網羅的に学んだそうです。
日本の国公立大学が文部科学省の管轄下にあるように、中国の大学も政府に所属しています。おもしろいのは大学によって入る省が違うことで、李さんの進学した工業系の大学は機械工業省に所属していました。成績のよかった李さんは自動的に機械工業省に入省することになり、国家公務員になりました。そこから1,200〜1,300人の社員を擁するある国有企業に情報システム担当者として派遣されたのです。汎用機を中心にプログラム開発とシステム保守の仕事をしていたのですが、この企業の将来性に疑問を感じ、23歳のときシステムインテグレーションを展開していた私企業へ移ることを考えます。国家公務員の私企業への転職はなかなか簡単ではなかったようですが、李さんはやりとげました。そのころ自分の将来像がすでに確立しており、そこへ到達するためにはどうしても転職が必要だと考えたからです。
大連を本拠地とする二番目の会社でのミッションは、企業にさまざまなシステムを提案する営業系のシステムエンジニアでした。ビジネスを動かしているという実感を感じられるこの仕事は、李さんにとって非常に面白かったようです。
■ITの世界はオープン、海外でも働けるはず
当時、日本はよくもわるくもITバブルのさなかにあって、日本のIT企業の多くが中国に人材を発掘に来ていました。それを目の当たりにした李さんは、“海外で働くという選択肢もあるんだ”ということを考え始めます。観光で行った韓国でIT分野の仕事事情を聞くともなしに聞き、それが自分の現在の業務とそれほど変わらないのを知って、“ITの世界はオープン、技術が同じなのだから国外でも十分やっていける”と思いました。そしてチャンスを求めて、一路日本をめざしたのです。李さん28歳のときでした。日本語はまったくしゃべれなかったそうです。
ハイデンハインというドイツを本拠地とするIT企業の日本法人に入社したのは、人材バンクへの登録がきっかけだといいます。ここでの配属は情報システム部門。ITマネジャーとして、本社の情報システム部門と連携を取りながら、必要とされるさまざまな業務システムの開発や導入を推進しています。海外支社とはいえ、本社は日本のIT事情を尊重してくれ、本社とは異なるシステムの導入を決定することも多いそうです。本社とのやりとりは英語、会社の中では日本語、一年遅れて日本にやってきた奥さんと家で話すのは北京語。李さんは実にトリリンガルな毎日を過ごしています。
■一週間間隔で7科目を一気に受験
李さんが勉強に目覚めたのは、大学時代の英語からです。それまで英語はあまり好きな学科ではなく成績もよくありませんでした。しかし、あるとき気づいたのです。“これからの時代、英語ができないと自分の将来はとても暗いものになる”と。それから俄然勉強を始め、成績も急上昇。そこでやればできると自信をつけたのが、今になっても資格試験に積極的にチャレンジできる原因なのだそうです。
現在、MCPに関しては、Installing,Configuring and Administering Microsoft SQL
Server 2000 Enterprise EditionやDesigning and Implrmenting Database
with Microsoft SQL Server 2000 Enterprise Editionなどを始め下記の表のように7科目を取得。これをなんと李さんは、全体で前準備期間約2ヶ月の後、あとは1科目ずつを1週間間隔で受験していったそうです。
<李さんの受験履歴
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| 2001年7月13日 |
試験番号210 Installing, Configuring, and Administering
Microsoft Windows 2000 Professional |
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⇒ MCP取得 |
| 2001年7月27日 |
試験番号215 Installing, Configuring, and Administering
Microsoft Windows 2000 Server |
| 2001年8月17日 |
試験番号216 Implementing and Administering a Microsoft
Windows 2000 Network Infrastructure |
| 2001年8月23日 |
試験番号221 Designing a Microsoft Windows 2000 Network
Infrastructure |
| 2001年8月30日 |
試験番号217 Implementing and Administering a Microsoft
Windows 2000 Directory Services Infrastructure |
| 2001年9月18日 |
試験番号228 Installing, Configuring, and Administering
Microsoft SQL Server 2000 Enterprise Edition |
| 2001年9月21日 |
試験番号229 Designing and Implementing Databases with
Microsoft SQL Server 2000 Enterprise Edition |
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⇒ MCDBA
(Microsoft SQL Server 2000トラック)取得 |
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⇒ MCSE
(Windows2000トラック)取得 |
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李さん曰く、
「短い時間に集中してやるから勉強できる。だらだらと長い時間をかけたらかえって頭に入りません」
うっ、凡人の耳には痛い天才の言葉。
テストはいつも英語で受けるのだそうです。マイクロソフトの試験は試験問題が長いので、日本語よりも早く読める英語の方が、李さんには好都合なのです。勉強スタイルは、英語ベースの試験情報をWebサイトから徹底的に集め、実機で動作を確認しながら詳細を詰めていく方法なのだそうです。仕事上マイクロソフト製品の管理は必須なので、働けば働くほど試験勉強がはかどるという恵まれた環境ではあったようですが。
李さんもMCP以外にいろいろ受験していて、先日はTOEICに初挑戦しました。彼はしきりに“恥ずかしい”を連発しました。どうやら初めてのTOEICで、900点突破できなかったのは、恥ずかしいということのようです。最初から高いハードルを設定して果敢に挑む姿に、李さんの仕事への情熱を見ました。
彼にとって、資格試験とは自分の実力を客観的に評価する手段です。試験を受けることによって、達成できていること/できていないことが鮮明に見えてくる。合格して資格を取るということよりも、試験を受けるという行為そのものが李さんの目的なのです。
■ゴールは業務のわかるITコンサルタント
李さんは、自分の力が生かせる場所が働く場所だと考えています。だから国は関係ない。今はたまたま日本にいるけれども、もしかしたら米国に行くかもしれないし、アジアの他の国に移住してもいい。彼の中に国境というものは存在しないのです。そのためにどこでもパスポートとして通用するITスキルを身につけたい、と彼はいいます。李さんにとってそれは業務のわかるITコンサルタント。実は最初に転職したときからずっと思い描いてきた自分の未来像です。
来年あたり、李さんはLinux関連の資格とプロジェクト・マネジメントの資格を取る予定。これもITコンサルタントになるために不可欠な勉強と考えるからです。PASSJで「資格を取ろう」のボードリーダーにも、いろいろな人に出会えるまたとないチャンスと思って応募しました。たどりつきたいゴールをきちんと設定しているからこそ、今するべきこともはっきり見えている。李さんの人生はそんな感じです。
皆さん、ぜひ李さんとじっくり会話してみてください。彼の勉強熱心さと人生に対するひたむきさに、大きな刺激を受けること間違いなし。私も思わず“爪のアカを煎じて飲みたい”と思いました。
インタビュー・文:吉田
育代
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