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MCA(Microsoft Certified Associate)資格試験がスタートして一年が経ちました。私の周りでも何人か受験していて、実際に問題を解いてみた感想をいろいろ話してくれます。エンジニアの一人がいうんです。“MCPをめざす人のプレテストと位置づけられているけれど、ちょっとやさしすぎる印象があったなあ。あれは技術者向けというよりは、一般の人向けのテストじゃない?”と。あらまあ、そうなんですか。受けようかなと思っていたのに。といって、私は技術者じゃないから、私にとってはやっぱり難しい試験かもしれないんですが。
それじゃあ、マイクロソフトさんにちょっと聞いてきましょうか。一年経ったことでもありますし、この試験の現状やこれからの方向性のこと、ここはPASSJですからデータベースの視点を中心にしながら尋ねてみることにします。


お伺いしたのは、マイクロソフト株式会社 パートナー戦略本部 T&C推進部 内野良昭部長です。
MCAがやさしすぎる、ですか。確かに、この試験はいかに技術知識を有しているかを競うテストというよりは、IT理論と製品知識をあわせもった技術者の育成をめざしたものなので、現場の第一線でバリバリ活躍されているエンジニアの方々には、そう感じられるところがあるかもしれません」
そういいながら、内野部長はMCAという試験についての現状分析を語ってくれました。それによると、MCAの受験者はどうやらエンジニアというよりは、IT業界でセールスやマーケティング関係に携わる方が多いんだそうです。それとこれからIT業界をめざそうとしている学生さん。IT業界で働くのに必要な基礎知識を得るために、MCAという資格試験が活用されているようです。
マイクロソフトにとって、これは思いがけない結果だったそうです。しかし、MCAというIT資格をこれから育てていくにあたって、大切な気づきでもありました。これほど一般ユーザーに近い人々に受験されるのであれば、いっそのことそうした側面をもっと強化していってもいいのではないかと内野部長は考えたのです。そのプランの1つが、MCA資格試験プログラム体系のリニューアルです。


といっても、OS・ネットワーク、アプリケーション構築、データベースといった科目ごとの試験体系や、内容そのものを変えようというのではありません。新しく科目が1つ加わるのです。それは現代のパソコンユーザーすべてに必要とされるIT知識に関する分野です。さて、なんでしょう? そう、セキュリティです。
「これまでセキュリティに関する知識や情報は、そのほとんどがネットワーク管理者やサイト管理者に向けられたものでした。しかし、悪意のあるウイルスソフトやジャンクメールが毎日のようにインターネット上に飛び交う今日、本当にセキュリティに関する知識が必要なのはエンドユーザーです。
高度情報化社会を実現するために本当に必要な情報リテラシーを身につけるために、MCAを役立てていただこうと考えて計画しました」
内野部長はそう語ります。マイクロソフト株式会社 パートナー戦略本部 T&C推進部 リーダー 中務聖子さんは、内野部長の言葉を補足するようにこう語りました。
「新しい科目であるセキュリティは、サーバ管理者やシステムエンジニア向けの技術論が多い中で、唯一クライアントユーザーに目を向けた資格です。ITを活用する上で、エンドユーザーとして知っておきたい知識を習得していただくことを目的に、試験構成を考えました。IT業界の人はもちろんのこと、一般企業や自治体などで部門セキュリティリーダーを務めるような方にもぜひ取得していただけたらと思います。また、インターネットビジネスなどを展開し、個人情報保護法の遵守に前向きな企業の皆さんにも、この試験は非常に合っていると思います」

 

どんなところにセキュリティの落とし穴があって、それを破られるとどうなるか、それを防ぐためにどうすればいいかといったことを学ぶ。エンドユーザーがシステム管理者の気持ちになって勉強するわけだ。これはつまり、社会全体のIT知識の底上げですね。マイクロソフトさんは改めてそれがミッションだと認識されるようになったのでしょうか?
「そういっていただくと格好いいのですが、これは当社の過去を反省する意味もこもっているんです」(内野部長)
と、いいますと?
「当社はこれまでのビジネスにおいて、どちらかというと製品そのものの訴求に終始するあまり、情報リテラシーの向上などにはあまり目を向けてきませんでした。平たくいうと、さぼってきたんですね(笑)。ここにきて“これではいけない”とハタと気がつきまして、MCAのような仕組みの中で今までの分も取り返すような取り組みができたらと考えたんです」
なるほど。この科目においても、OS・ネットワークやデータベースなどと同様に、特定の製品に偏ることのない普遍的な知識が得られるように構成され、試験問題はセキュリティ分野の専門家の監修を経た上で実施されます。この科目が追加されるのは、予定では2004年4月となっています。まもなく詳しい情報がマイクロソフトのホームページに掲載されますので、どうぞお楽しみに。


その一方で、最終的にエンジニアをめざす人々にとっても、MCPの前哨戦としてMCAにチャレンジすることには意味があると、マイクロソフトさんは考えているようです。中務さんは次のように語ります。
MCPから入っていただきますと、どうしても知識が製品カットになって、ある部分しか知らないという現象が起きてしまうんですね。
その結果、1科目でMCPを取得したという方はMCAの方より不足している知識がある危険性があります。
マイクロソフトとしては、将来的にエンジニアを希望していて今は白紙状態という方は、スタートの勉強はぜひMCAから始めていただければと考えています。そして、次のステップでMCA Masterになっていただいて、基礎を全部学んでベースを固めてから、自分の専門へ進むという形でMCPをめざしていただければ、理論にも製品にも精通したスペシャリストとして活躍していただけると思います」
特に、MCAのOS・ネットワーク、セキュリティはエンジニアの方全員にお勧めだそうです。
マイクロソフトさんでは、着実にステップを上っていく未来のエンジニアを支援すべく、MCA MasterをめざすMCA受験者に、バウチャーやトレーニングを提供するプロモーションキャンペーンを展開しています。これが非常に好評で、このキャンペーンによって、MCA全受験者に占める2科目合格者と3科目合格者の割合が逆転したのだとか。受験者の方々からは、“このキャンペーンはずっと続けてほしい”との声が寄せられています。
では、ある程度IT知識を持った現役のエンジニアが、MCPのプレテストとしてMCAを受験する場合はどうでしょうか。
「勉強していて簡単すぎると思われるのなら、飛ばしてくださっても結構ですよ」
とコメントするのは内野部長。
「ソフトウェアベンダーが認定するIT資格は内容が実務的であることから、転職などの際の武器になるといわれています。MCPMCSEMCDBAなどは、業界でまさにそうした認知を受けているIT資格です。しかし、MCAはITテクノロジーの基礎を網羅した試験ですから、そういう意味では実力を示すものとはいえないかもしれません。“基本的なことはもう大体知っている、それより資格は業界をサバイバルしていく武器としたいんだ”とおっしゃる方は、MCAを無理に受験していただく必要はありません。どうぞストレートにMCPをめざしてください」(内野部長)。
 ただ、MCAを実力を示す資格として利用する方法もないではないみたいですよ。それは非常に高い得点で合格すること。MCAはIT理論のパートと製品知識のパートから構成されています。合否の分かれ目は正答率60%ですから、極言すれば、どちらかのパートに非常に精通していればそれで合格することも不可能ではありません。しかし、そのレベルで満足せず、自分の知識を整理し、結果を残すという意味で満点をめざして勉強するというのもおもしろいのではないでしょうか。


エンジニアというのは技術職ですから、腕に覚えさえあれば日本を飛び出して、海外で活躍することも可能です。そのとき、自分の能力を判断してもらう一助としてIT資格は有効です。それゆえ、IT資格はグローバルに通用するものを取得しておきたいというのが、エンジニアの素直な気持ちでしょう。そのために日本独自資格であるMCAの取得をためらっているという方もいらっしゃるかもしれません。
MCAは日本発のIT資格ですが、別に日本だけにとどまっていようと思っているわけではないんですよ。われわれはこれを輸出してもいいと思っているんです」
輸出、ですか。日本からグローバル・スタンダードを生み出そうというのですね。
「特にわれわれが対象として考えているのがアジアです。中国、インドなど、今後IT業界に携わる人口の増加が見込める国には高い需要があると予想しています。新しく加わるセキュリティという科目などは、国境に関わりなくすべての人々に学んでいただきたいIT知識ですから、MCAという資格を世界に広める意義は大きいと思いますね」
MCA世界進出の第一歩というわけではありませんが、すでにMCAを紹介する英語のサイトは存在するのだそうです。単純ですが、MCAが世界に知られる資格となってくるとちょっと見方が変わってきそうですね。早く取得した人は、“私はもうずっと前から持っているんだ”なんて、海外のエンジニアに自慢できたりして。ぜひ日本発のグローバル・スタンダード資格として、大きくはばたいてほしいものです。


もう一つ、データベースエンジニアをめざして資格試験を受験されている方からときどき伺うのが、MCA データベースMCPのSQL Server関連科目の試験の難易度のギャップです。「MCAはやさしかったのに、MCDBAになろうとしたとたん、とんでもなく高い壁が立ちはだかってくる!」というわけです。“2つの試験の間に、もう1つ中間的な資格があればいいのになあ”などという意見を聞いたりするのですが、マイクロソフトさんとしては、本来、データベースというのは扱いに技術を要するものであり、MCPのSQL Server関連科目も難しいから意味があると考えているようです。内野部長は次のように語ります。
「データベースは企業情報システムの根幹を成すエンジン部分です。知識と訓練なくしてジェット機を操縦できないのと同様に、データベースを操作するにはそれなりの学習が必要です。SQL ServerはGUIにすぐれているので簡単そうに見えますが、本来それほどやさしいものではありません。MCDBAをめざそうという方には、“そこに山があるから登るんだ”といった心意気で、頂上をめざしていただければと思います」
でも、それだと自力ではいあがれる人しかMCDBAを取得できないから、人口はそれほど増えないですよね?

 
私の疑問に答えてくださったのは、マイクロソフト株式会社 パートナー戦略本部 T&C推進部 シニアマーケティングスペシャリスト 中川ゆう子さんです。
「もちろん、研修教育の充実などで資格取得のサポートはしますが、基本的にはすぐれたデータベース・エンジニアというのはそれほどはいないもので、希少性があるからこそ市場価値が高いとわれわれは考えています。」
なるほど。難しい試験だからこそ、チャレンジしがいがあって合格に喜びがあるのであり、資格そのものに希少性が高いからこそMCDBAは存在意義があるのですね。
「とはいえ、われわれも崖の底から勝手にはいあがってきてくださいと、放任主義的な考えに終始しているわけではありません」
とは、内野部長。
「SQL Serverはマイクロソフトの法人向け製品グループの中でも、最重点戦略製品の一つです。期間限定のセールスキャンペーンなどといったスポット的な施策ではなく、企業におけるSQL Server導入を恒常的に支援していくとともに、MCDBAを筆頭に高いスキルを持ったSQL Serverエンジニアの方々に活躍していただく場を創出していくことは、マイクロソフトが会社全体として取り組む課題だと考えています」(内野部長)

天は自ら助くる者を助くといいますが、どうやら自ら勉強する人に未来は常に開けそうな気配。今年も明るい明日を信じて、精進することにいたしましょう。

取材・文:
吉田 育代 (よしだ いくよ)

<プロフィール>

関西大学社会学部卒。百貨店宣伝部、広告制作プロダクションを経て、IT分野をカバーするライターに転身。
現在は企業情報システムを中心に、幅広く執筆活動を行う。
著書に「日本オラクル伝」「バックヤードの戦士たち」 (共にソフトバンクパブリッシング刊)など。

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